「ぼんやり海を見ていたら〈昼間のビールは格別でしょう〉と声をかけてくる人がいてね。それが〈なぎさホテルのI支配人〉との出会いでした」
大正末期に湘南初の洋館式ホテルとして建てられたという瀟洒な木造二階建ては、正面の時計台が印象的だ。一泊3000円の別館からやがて海を望む絶好の部屋へとI支配人の厚意で移り棲み、従業員とも賄いを囲むうちに家族同然に親しくなった。
時にはI支配人と夜の海を見ながら酒を酌み交わすこともあり、かつては氷川丸の厨房長も務めた洒脱な海の男はいう。
「お金なんていいんですよ」
「あなた一人くらい何とかなります」
「あせって仕事なんかしちゃいけません」
「いつまでもいらっしゃればいい・・・」
極めつけにこうもいった。
「何をやったって大丈夫。私にはわかるんです・・」
「人を遠ざけてきた当時の私にみんながよくしてくれたのも、全てはあの人のおかげ。ホテルの床が抜けるほどの本を買い込んで読書に明け暮れる男のために本棚まで作らせ、旅に出るといえば宿代もまだなのに金庫から幾らか包み、いいから持ってけってね。
その大丈夫の根拠が「野良犬が私とあなたにしか尾を振らなかったから」なんて、ホンモノの大人にしかいえませんよ。
今は私自身よく若い人に大丈夫というけど、なぜ支配人があの時そういったかというと、青年が得か損かでは行動してなかったからだと思うんだよ。そして彷徨える青年を、別に彼らも損得勘定で見守ったわけじゃない。でなきゃ7年も居ないし、居させません」(伊集院氏)
私の大好きな作家の1人でもある伊集院静さん。
その伊集院静さんの、作家としての原点である「なぎさホテル」が大好きです。
この本を読むと「逗子」に行きたくなり、「逗子」に行くとこの本が読みたくなります。
先日も、「なぎさホテル」を読んで、逗子に行きたくなり行って来ました。
今は、「なぎさホテル」はありません。平成元年に取り壊され、現在は「夢庵」になっており、(株)逗子なぎさホテルという形で土地の管理をしています。
それでも、伊集院静さんが「明日からの生き方を、思いながら缶ビールを呑んだ逗子海岸」に立つと、なんだか自分の中の「不安」も、なんとかなるさ!と思うから不思議です。
伊集院さんは、小説の中で、こんな風にも言っています。
『なぜ、あの年、あの季節に逗子の海を歩いたのだろうか、 ほんの数分でも、あの海岸を歩く時刻がずれていれば、小説家になってもいなかったろうし、ひょっとしてもうこの世にいなかったかもしれない。人と人が出逢うということは奇妙この上ないこと、人は人によってしか、その運命を授からないのだろう』と。
「なぎさホテル」を読んで思うんです。
小さいことにくよくよしてないで、粋に生きなきゃなって(笑)
逗子散歩の帰りは、小坪漁港に寄ってランチをいただいてきました。
この辺りには、魚を使った名店や、海を眺めながらごはんが頂けるお店がたくさんあります。
でも、やっぱり私は「ゆうき食堂」ですよ!
朝、海から揚げた新鮮な魚介が、お安く頂ける名店です。
この日は、風が強かったため、提供できる魚が少なかったとか。
それでも、10種類もの刺し身の中から、2種類を選べる定食「刺身2点盛り定食1,100円」をいただきました。
名物のタコはなく、クジラも迷ったんですが、アジとカツオのセット。
それに、温泉卵(前の人はトマトでした)と納豆、おしんこに味噌汁が付きます。
なぜか壁一面の、モンローさんがウケます(笑)
ゆうき食堂
小坪 | 神奈川県 逗子市 小坪 5-2-11
0467-24-1682
営業時間 [月・水~金]11:30〜15:00
[土・日・祝]11:30〜20:00
定休日 毎週火曜日
火曜が祝日の場合は営業
近々、こんどは電車に揺られながら逗子に来たいと思います。
その時は、またUPしますね。
あー逗子行きたい。
『あんまり考えないほうがいい。なるようにしかならないものです。無理にそうしなくとも、何かがなる時は、むこうからやってくるものです』
なぎさホテル [ 伊集院 静 ]
【よく読まれている記事】
湘南鎌倉・稲村ヶ崎から極楽寺駅まで散歩しました